NTTグループの総合不動産会社としてオフィスビルの開発・賃貸事業を軸に、商業事業、住宅事業、グローバル事業、ホテル・リゾート事業と幅広く事業を展開されているNTT都市開発さま。とくに近年は、その地域ごとの歴史や文化を継承しつつ、さらに価値を高められるような開発に、産官連携や最先端のICTを活用したワークプレイスの開発をはじめ、時代が求める持続的かつ特徴的な街づくりに取り組まれています。
そしてこのたび中国支店が所有する「NTTクレド白島ビル」駐車場に、エネットのEV導入・運用サポートEnneEV®(エネーブ)を活用してEV普通充電器を設置。遠隔制御可能なシステムにより電気料金の上昇を抑制しながら駐車場契約者に付加価値をもたらす新たなビジネスモデルを打ち立てました。導入までの経緯やねらい、今後の展望などをNTT都市開発中国支店の矢口 淳一朗様(写真1)とNTTアーバンバリューサポート中国事業部の松下 晃典様(写真2)に伺いました。
企業のEV導入の機運が高まるにつれ、ビル開発・ビルサービスにおいてもEV充電ステーション設置の必要性が潜在的に高まってきている。
今後の社会的なEV化の広がりを見据えた新たなビル開発・新たなビルサービスの在り方を考え、積極的にEV充電器設置に取り組むことに。
NTTクレド白島ビル駐車場に、遠隔制御可能なEV普通充電器を設置し、EV導入・運用サポート/EnneEVを採用。充電時間の制御や電流値制御による、電気料金の上昇を抑制した運用を実現した。すでに年度内に10台の充電器を追加予定。
今回のEV充電器設置の前提には、グループトップのNTTが2018年に「EV100※1」に加盟し、NTTグループが保有している一般車両約11,000台について、2030年までの「100%EV化」を目指している流れがあります。当社はNTTグループの中で不動産事業を担い、街づくりや再開発事業をしながらビルを建設し、テナントさまからの賃貸収入で収益を上げていく企業です。そのテナントには一般の企業はもちろんですが、グループ企業も全国的に一定数の割合で含まれます。それらグループ企業は2030年100%EV化を進める上で、社用車のリース契約が切れるたびにEVに切り替えています。2030年はそんなに遠い未来ではありませんから、すでにグループ企業のテナントからしてEV充電器のニーズがハイペースで高まりつつあるのです。さらに、世界的な情勢やメーカーのマインドなどをとらえても、ICE※2が今後、他のものに置き換わっていくだろうことはまず間違いなく、必ずEVに置き換わるかはわからないものの、EVが有力な代替候補であるとも判断しています。
テナントさまの需要をとらえて対応することが私どもの最重要テーマですから、「ここは専用のEV充電器があって便利」「あのビルならEV充電器があるね」など、テナントさまにとっての魅力や、入居ビル候補として選ばれやすい条件になるのであれば、先行して積極的にEV充電器設置に取り組んでいこうと考えた、これが今回のEnneEV導入の経緯です。
※1 企業による電気自動車の使用や環境整備促進をめざす国際イニシアティブ
※2インターナル・コンバッション・エンジン=内燃機関。ガソリンやディーゼル燃料などシリンダー内で燃料を燃焼させる、一般的なエンジン
EnneEVはエネットの電気とセットのサービスですから、電力の使用状態を把握した上で適切な提案をしてもらえます。やはり、電力使用のピークを抑えて電気料金の上昇を防いでくれる点が一番の決め手になりました。運用開始までのコンサルティングでも、建物全体の電力の需給バランスやトータルコストを含めて丁寧に助言してもらえたので、とても助かりました。EV充電器を設置する場合、回路的な負荷のバランスや、時間帯での使用電力量の調整が大きなポイントになります。最適な電力プランとセットだからこそ、安心して充電器設置に踏み切れましたね。
技術面でも大いに相談にのってもらいました。既存建物にEV充電器を設置することもあり、EV充電器用として使いたい主に照明やコンセントに利用される単相電源に余裕がないという事情がありました。そこでエネットの技術部隊に、容量に余裕があり主にポンプや空調に利用される三相電源を活用できないか相談しました。単相と三相電源は電圧や配線が違いますが、過去の具体事例なども紹介いただき、余裕がある三相電源をEV充電器用としてうまく有効活用することができました。「これなら既存設備を活用してできるね」という着地点を見つけることができたのは、電気の専門の方と相談しながらだったからこそだと思います。
運用を始めてからわかったこともあり、例えば充電器のコードの長さは延長しました。駐車スペースの取り方自体が少し前の時代の仕様だったこともあるのですが、クルマによって充電位置や駐車する向きなどの兼ね合いがあったんですね。これもやってみたからわかることで、先駆けだからこその経緯だったと思います。次からはその経験をノウハウとして、しっかり活かしていければと思います。
若干の試行錯誤はありましたが、総合的にはとてもスムーズに導入できましたし、テナントさまにも設置台数すべて契約いただけ、順調に運営ができています。
エネットや充電器メーカーの協力のもと、実験的だった今回の充電器設置でしたが、テナントさまにも喜んでいただけましたし、コスト面でもバランスが取れたモデルが構築でき、とても有意義でした。やはりEV充電器のニーズは多く、今年度中に早くも10台の追加設置が決まりました。最初はグループ企業との契約でも、他のテナントさまも駐車場で使用実態を目の当たりにしますから、「あ、こういう充電器付きの駐車場契約が可能ならうちもEVを導入しよう」と考えるきっかけになっていると思います。また、他のビルのオーナーからも「NTTクレド白島のようにできないか」といった問い合わせも入っているようです。
NTTクレド白島ビルテナントさまについては、2025年までの計画をヒアリング済みで、それによるとトータル40台ぐらいの充電器設置が見込まれています。まずは年度内のプラス10台で計15台になりますから、様子と実績を見つつ増設を進めていこうと思います。その基本的な準備は年度内に行う予定です。
総合的に見て、契約者駐車場へのEV充電器はまさにテナントさまに喜ばれる設備だと感じますし、確実に当社ビルの付加価値となる魅力を発揮しています。
EVは自動運転との相性がよく、それらの技術が共進化している時代の流れを見ても、どんどん増えていくと思います。それに伴い、今回のような導入がいずれは標準にさえなると予感しますね。実際にやってみて、潜在的な需要は大きくあるんだなとあらためてわかりました。ですから新規の開発があるときには、選択肢としてEV設備は必ず挙げていくことになるだろうと思います。実は新しく建てるビルでもEnneEVを活用したEV充電器の導入を検討中です。広島エリアでも今後、商業ビル建設や再開発に際してEV充電器サービスを最初から企画として盛り込んでいければと思います。
さらに全国的に見れば、EV向きの短距離で社用車を使用するパターンが多いであろう大阪や東京などには、さらに充電器付き駐車場などの需要が膨大にあると想像しています。ビジネスとしての可能性の広がりも楽しみですね。
今回のEV充電器設置を中心となって進められたのは、ビルのオーナーであるNTT都市開発の矢口様と、運営管理会社であるNTTアーバンバリューサポートの松下様。オーナーと運営管理会社が同じグループ企業で密に連携を取れることもNTTグループさまの強みと言えるでしょう。
NTTグループさまは環境政策についても一丸となって取り組まれていて、「2030年度に温室効果ガス排出量を80%削減(2013年度比)」および「2040年度NTTグループ全体でカーボンニュートラル達成」を宣言しています。NTTクレド白島ビルにおいても、今後、共用部や専有部分を個別にグリーン電力に切り替えていく方針だそうで、世のEV化の流れに即応するサービス提供を含め、環境への取り組みを積極的かつ多角的に推進されています。