第1回~第3回のコラムでEV導入から運用後までのコストイメージがつかめたところで、次に気になるのは、実際にEVを社用車展開するにあたっての使い勝手、とくに走行距離などの実用性ではないでしょうか?
そこで今回は、実際に当社が行った走行実験のデータをもとに、EVの1充電あたりの走行可能な距離の実態や、社用車として運用する上でのポイントなどをご紹介します。
目次
※当コラムでご紹介するデータは当社調べに基づく参考値で、実際の航続距離等を保証するものではありませんのでご了承ください(2022年1月現在)。
EVと聞くと「フル充電でもガソリン車の満タンほどの距離は走れないよね」「社用車で充電切れになって立ち往生なんて困る」という、走行距離に関する不安が大きいのではないでしょうか? 実際はどうなのか、当社が測定したデータを参考に掲載します。
走行距離 | 電池消費量 | 電費 |
---|---|---|
95km | 46%(18.4kWh) | 5.16km/kWh |
175km | 68%(27.2kWh) | 6.43km/kWh |
176km | 79%(31.6kWh) | 5.57km/kWh |
177km | 68%(27.2kWh) | 6.51km/kWh |
230km | 85%(34.0kWh) | 6.76km/kWh |
※クルマは日産リーフ、40kWhタイプ(レンタカー)。2020年8月の当社実測データ
世の中にはさまざまなEVがありますが、現在もっとも一般的で社用車としても多く採用されているのはやはり日産リーフかと思います。紹介するデータは、もっともリーズナブルな40kWhタイプのリーフの数値なので、かなり現実的なものと言えるでしょう。交通状況などによって電費は多少ばらつきますが、実測データにより最低でも5km/kWhは見込めることがわかります。つまり、一度のフル充電で5km/kWh × 40kWhで200kmは走れる計算です。表の下から2段目や最下段のように電費6.5km/kWhを超えれば260km程度、走行できます。
上の表では、電費が5km/kWhぐらいから6km/kWh台の後半ぐらいまで幅があることが見て取れます。この実験では、電費は高速道路を使用したかどうかで大きく変わりました。一般道の走行では6km/kWh台を保て、高速道路などでアクセルのベタ踏み状態が続くと電費が落ちます。首都圏や地方都市の営業車のように、近場の一般道をぐるぐる乗り回す乗り方がEVに向いていると言えるでしょう。
1.で見たように、1日、社用車が走り回る距離が200km以内なら問題なく、帰ってきてから夜間などに充電すればよい、となります。もしも1日に走る距離がちょうど200kmぐらいの場合には、運転の仕方の工夫で充電量を稼ぐと安心できるかもしれません。その工夫の1つが「リフト&コースト」。もともとはF1用語ですが、アクセルから足を離し、惰性で走行することをいいます。EVの場合、ときどき可能な場面でリフト&コーストをしていくと、バッテリーが節約できます。
長い下り坂などでアクセルを外すと、回生ブレーキが働いてクルマのバッテリーに蓄電します。このしくみをうまく使えば、充電量を若干ですが回復することもできます。
回生エネルギーによる蓄電時は、赤い丸の部分が発光して知らせます(これは当社の社用車リーフのフル充電時。286km走行可能と表示されています)
※ちなみに測定時、プロパイロットモードでは回生エネルギーの蓄電ができませんでした。バッテリー残量を確保したいときには使わないほうがいいでしょう
40kWhのバッテリー搭載車なら1日200km程度の距離なら問題なく、回生エネルギーでの蓄電などが可能な走り方なら250km程度は見込めるとわかりました。しかし、社用車の場合、地方などで1日あるいは泊りがけで200~300kmのところを行き来したりする使い方もあるでしょう。そんなときは、計画的な経路充電が必須です。そこで便利なのが、アプリやカーナビの充電マップです。
● (アプリの1例)GoGoEVの充電マップ https://ev.gogo.gs/map/
全国の充電スポットが検索でき、しかも急速充電か普通充電か、カーディーラー、パーキング、ガソリンスタンド等のスポット種別などがアイコンで一目でわかります。
● リーフのカーナビ
「充電スポットを探す」をタッチすると充電スポット一覧が出てきます。また、目的地を設定しておくと、現状のバッテリーでは到達できそうにない場合は、ナビゲーションが教えてくれる機能も搭載されています。
経路充電する場合の大きなポイントは、「充電待ち」の可能性を考慮することです。高速道路などでもそうですが、急速充電は最大で30分かかるところもあります。仮に充電しようと思って行った充電スポットが使用中であれば、その1台が終わるまで最大30分を待ってから自分のクルマの充電が最大30分かかる計算です。アプリ等では使用状況も確認でき、空いているかどうかわかりますが、そこへ行くまでのあいだに、同じように誰かが充電に来る可能性は大いにあります。ですから、いつ・どこで・どのタイミングで充電するか、あらかじめ計画的に考えて時間にゆとりある動きを考えておきましょう。また、泊りがけで出張する場合、宿泊先を充電スポットのある宿にすることはもちろん、充電器の予約を入れておくと良いでしょう。
EVの航続距離の実際と、経路充電が必要な場合の充電スポットの探し方やポイントを解説しました。
実際にEVを導入したイメージがつかめたでしょうか? イメージするほどガソリン車から使い勝手が激変するとか、ハイリスクではないということがおわかりいただけたのではないかと思います。
もし、長距離走行を基本とする法人なら、リーフの場合、40kWhでなく62kWhグレードのクルマもあるので、そちらを購入したほうが実態に見合っているかもしれません。
また、EVは今後、電池の改良や、AIによるより高効率な回生エネルギーの回収・蓄電システムなど、さまざまな開発が進んでいくと考えられます。充電スポットの使い勝手を含め、どんどん使いやすくなることが期待されますので、ぜひEVシフトによる環境への貢献に前向きになられてはいかがでしょう。
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