国内外からの北海道観光客にとって、お土産と言えば北海道銘菓「白い恋人」。
その製造・販売を行う石屋製菓株式会社さま(以下、ISHIYA)は、2022年より北海道での地域密着型の電力販売代理店の株式会社エゾデン(以下、エゾデン)さまを介し、エネットのEnneGreenにより実質再生可能エネルギーの利用を開始しました。2023年4月、一部切り替わっていなかった施設についても実質再エネの導入が完了。全施設の電力使用によるCO₂排出実質ゼロを達成しました。
ISHIYAの社長室 広報CSR推進担当&サスティナビリティ推進チーム亀村建臣さん(以下、亀村)、人事総務部総務チーム&サスティナビリティ推進チーム鈴木遼さん(以下、鈴木)、エゾデンの営業ご担当者千坂規朗さん(以下、千坂)に導入の経緯や社内外の反響などについてお話を伺いました。
(亀村)ISHIYAがSDGsへの取り組みを始めたのは、2019年の終わり頃からです。コロナ禍に突入し、観光客は激減、白い恋人パークは休館せざるを得なくなり、工場も稼働させられず…という危機的な状況でした。しかし、事業活動がストップしているこの機に、今企業に求められているSDGsへの取り組みをどう進めていくかという課題に向き合うことにしました。弊社の長期ビジョン「100年先も、北海道に愛される会社へ」を実現するために、6つの分野においてSDGsを達成するための活動をステークホルダーに対して約束しています。
この6つの約束の実現のために、SDGsの17の目標をプロットし、その達成度合いを分野別に集計しました。わたしたちは「05 地域社会」については、白い恋人パークの運営や、地域のイベントやお祭りなどにも協賛しているので、スコアは高いのですが、「03 環境」のスコアが非常に低い。中にはスコアゼロという結果のものもありました。そこで、SDGsの重点取り組みの一つに、「電力によるCO₂排出ゼロ」「脱炭素」を掲げたのです。
「CO₂排出ゼロ」という目標に対し、まずは実態を把握することから始めました。CO₂の排出量を建屋ごとに調べてまずは省エネがどれくらいできるか検討することから始めました。まずは、日頃の運用面でできることをちょっとずつやっていこうと考えたのですが、当初、社内からはあまり良い感触は得られませんでした。みんなやる気はあっても、具体的に何に取り組むべきかが分からなかったのです。省エネに優れた設備を導入すれば一気に進むのかもしれませんが、それにはコストもかかります。なので、そこはコロナ禍で事業活動が止まっていることを逆手に取り、コスト意識の高まり=省エネ活動という切り口で、SDGsの取り組みへと話をつなげて説明し、理解してもらえるよう努めました。
また、この取り組みを社会へ発信することも、社内全体の意識の変化にもつながったと感じています。当社では「ISHIYA CSR コミュニケーションブック」という冊子を制作したり、HPに活動を掲載したりして、SDGsへの取り組みを発信しています。すると次第に社外の人から「こういう活動されているんですね」「コミュニケーションブック見ました」などと言われるようになってきたのです。世間から注目されていることを実感し始めると、次第に社長をはじめ社員全員の気持ちも変化していったように思います。
この取り組みを始めてしばらくすると、現場の皆さんが主体的に動いてくれるようになりました。例えば「連続運転していたモーターを間欠運転にしてみよう」といったアイデアを試した結果、大幅に電気代が削減できることがわかり、そういった成功体験をすると、「じゃあ次はこれを」と次々に試すようになっていく。こうした小さな成功を少しずつ積み重ねていくことが重要なのだと思います。
ISHIYAには各工場や白い恋人パークなど、部門横断のサスティナビリティ推進チームがあり、今ではそのチームが会社の方針に則って自主的に取り組むようになりました。ある部門から省エネ効果があった取り組みが報告されると、他の部門のメンバーから「見学したい」「研修会を開いてほしい」といった声もあがるようになり、部門間の競争というか、いい相乗効果が生まれたと思っています。
(鈴木)さきほど、実態を把握するという話題が出ましたが、そのために活用している、エネット電気の見える化サービス「InfoEnnet(インフォエネット)」は、もう「これがないと仕事ができない!」というほど、電気の使用状況の分析に大変役に立っています。1カ月単位ではなく、1日単位、30分単位でデータを見ることができるのが本当に便利です。建屋毎の電気の使用状況が見える化されているので、即座に分析・改善が可能になったと思います。以前、北広島工場で契約電力より電力使用量が多くなっていることがあって、その時もInfoEnnetを利用し、当日の天気、最高気温などを参考に、時間軸と照らし合わせながら、分析・検討をすることができたので助かりました。
電力使用の実態を把握し、省エネ活動を活発化させると同時に、エゾデンさん・エネットさんから利用する電力そのものを実質的にCO₂を排出しない、再生可能エネルギーを利用した電力に変えることを提案いただき、2022年より宮の沢工場・北広島工場を皮切りにEnneGreenを導入しました。2023年4月には一部まだ導入できていなかった白い恋人パーク内のチュダーハウスも実質再エネを導入し、全施設の電力の使用によるCO₂排出量を実質ゼロにすることができました。
EnneGreenは電気に環境価値(非化石証書)を合わせて実質再エネ導入とする仕組みだと聞いていましたが、最後のチュダーハウスのEnneGreen導入時は、ちょうど地元北海道企業局の運営する水力発電所由来の環境価値を適用できると聞き、採用させてもらいました。当社は、できる限り北海道産の原料を使用して商品を作っており、例えば「白い恋人」に使用している小麦粉、砂糖、生クリームは北海道産100%です。ですから、今回ご提案いただいたときは、原料も北海道産、電力(環境価値)も北海道産という訴求も可能になります。社員のなかにも“石屋製菓=北海道に根ざした企業”というマインドが浸透していることもあり「全電力CO₂排出実質ゼロ」は社内に対する影響も大きかったですね。電力ひとつで社員の意識にこれだけの変化があるのかということを実感しています。
(亀村)北海道全体でいうとISHIYAも含めSDGsの取り組みをもっと進めていかなければと感じています。北海道の菓子業界全体でも意識を高めていきたいです。弊社がCO₂排出量実質ゼロを実現したことは、北海道の企業として環境面において地域貢献につながる取り組みになったのではないかと思っています。
北海道内には有名な菓子店がたくさんあります。どの菓子店の商品もおいしいですし、品質もいいですし、見栄えも抜群です。ではお客さまはその中で何を基準に選ばれるかというと、最終的には「その会社が好きか嫌いか」だと思うのです。
例えば、A社とB社のお菓子、見た目も値段も同じ、どちらもおいしいのにA社のほうが売れているという場合、その選択の理由の一つに「A社は良い会社だから」という思いがあるのではないでしょうか。
我々も「脱炭素への取り組み」やこれからは、特に地元北海道に愛される活動を通して、お客様に「ISHIYAは良い会社だから、商品もおいしい」と感じていただけるよう、今後も引き続き真摯にSDGsに取り組んでいきたいと思っています。
先日、エゾデンさんとエネットさんの案内で、北海道企業局さまが運営する北海道の水がめであり発電所でもあるダムを見学する貴重な経験の機会を得ました。今後、当社のお取引様や社員にもこのような見学会を行えないか、またエゾデンさんやエネットさんとも何かイベントができないかとも考えています。現在、白い恋人パークの見学コースに、SDGsの取り組みを案内するコースがあるので、そのなかで活用できたらという思いもありますね。今後も、地元北海道の「ゼロカーボン推進」に資する取り組みを一緒にできたらと期待しています。
北海道エリアの需要家さま向けにアライアンスパートナーとしてエネットの販売代理店として奔走していただいている株式会社エゾデンさま(以下、エゾデン)。今回のISHIYAへの提案も、エネット担当の千坂規朗さん(以下、千坂)によるもの。
(千坂)エネットとのお付き合いは約4年前からで、道内の法人向けの提案を一緒にしています。電力の世界は専門的で難しい言葉も多く、昨今の燃料価格の高騰や複雑な仕組みで価格が決まるという説明を、自分たちにもしっかり教えてくれますし、お客さまへの説明も同行いただいてご納得いただくというシーンもありました。また、お客さまや当社が再エネを導入することをアピールするプレスリリースを配信したいという時、他の電力会社と違ってきめ細やかに対応してくださるのは助かっています。さらにNTTグループの安定感と、日本全国に供給できるという点でも可能性を感じました。
今回、石屋製菓さまという北海道、もっと言えば全国的に名が知られている企業がCO₂実質排出ゼロを達成されたことについて、道内の他企業にも大きなインパクトを与えたと感じています。営業活動に行くときは毎回、お客さまに石屋製菓さまのプレスリリースをお見せしてEnneGreenの導入意義を説明するのですが、みなさん食い入るようにご覧になりますし、反響の大きさを感じますね。
北海道は環境省のゼロカーボンシティに宣言している自治体が100以上あり、これからはEnneGreenに親和性の高い自治体にもアプローチしていきたいと考えています。電力小売業界は他社との差別化が非常に難しく、今後は価格以外の付加価値の提案も必要になっていくと思います。電力小売のもう一歩先を見据え、エネットさんにもお手伝いいただきながら、提案していきたいと思っています。
エゾデンと二人三脚でISHIYAの「実質再エネ100%」を実現した、エネットの山村啓輔(以下、山村)は達成感と地元北海道に役立つことは何かを自問します。
(山村)北海道で生まれ育った自分にとって、石屋製菓さまといえば日本に誇る北海道のシンボルのような存在。そんな石屋製菓さまに、エゾデンさま経由で2019年よりエネットの電気をご利用いただいていました。石屋製菓さまは、北海道銘菓「白い恋人」の製品トレーに「バイオマストレー」を採用するなど、サステナビリティを意識した取り組みをされていました。コロナ禍になり、さらにSDGs達成に向けての活動を加速しようとされている中、電力によるCO₂排出量削減への取り組みを検討され始めていらっしゃるとのことで、エネットの提供するEnneGreenをエゾデンさまと一緒に提案させていただきました。
もし導入いただけたら、北海道を代表する環境配慮企業として、フラッグシップ的な存在となると思いました。なので、どうしても「白い恋人」を「100%実質CO₂排出量ゼロで作っている」と謳ってもらえればという思いで「全施設に導入しましょう!」とご提案をさせていただき、このたび実現したことは、営業冥利につきる仕事でした。日本のカーボンニュートラル達成に向けて、一緒に価値を創造していくための“絵”を描いていけることがとても嬉しかったです。
石屋製菓さまやエゾデンさまに共通するのは、地元に根差し、北海道民に愛される企業をめざしていることです。エネットは全国展開している電力会社ですが、わたしにとっては自分の生まれ育った北海道の未来を明るいものにしたいという思いから、電力という側面から環境に配慮した取り組みをご支援するとともに、いま北海道が掲げている「ゼロカーボン北海道」に資する活動を、電力供給だけでなく、企業価値の向上や地域の活性化につながるサービスを提供することで貢献していきたいと考えています。
創業1947年(昭和22年)。北海道銘菓「白い恋人」などの人気のお菓子を作り続け、企業理念「しあわせをつくるお菓子」という企業理念のもと「100年先も、北海道に愛される会社へ」という長期ビジョンを掲げ、CSRに積極的に取り組み、その活動を公開中。
北海道生まれのコンサドーレとEZOCAでおなじみのリージョナルマーケティングの共同出資。“身近な「電気」を通じて道民の皆さまにお返しを”しという思いから2015年創業された。エネットの販売代理店として北海道のお客さまにEnneGreenを提案中。